“テレビ” ガンパレード・オーケストラ白の章 攻略裏技屋

“テレビ”

隋唐演技(少年編第1話)
【情報提供者一覧:秋月様】
窓の傍は夜の冷気が入ってきて寒かったが
それを忘れるほど書が面白く、僕達は読み耽っていた。
それは西城の歴史を書いた書で、黒衣大食に
ついてのことを面白おかしく論じていた。
侠達はこの国の歴史よりも、他国のほうの歴史に
興味がある。
それは多分、行った事がないからだろうと自分
では思っている。
旅行でもしている気になるかも知れない。
「侠達…居るかい?」
「居るよ。」
寒気を仕切るために屏風をどけて、小柄な少年が入ってきた。
髪は金色で、目は、青かった。別に都では珍しくもなかったが
侠達の田舎では大層珍しい西城の血だった。
「有李居、どうしたの。こんな刻に。」
「アリーだよ。」
西域の発音で、アリーはしかめつらしく言った。
彼にとっては挨拶のようなものだった。
「外を歩いていたら、明かりが見えたんだ。」
言われて、丸い窓にカーテンもしていないことに気づいた。
「そうか。でもどうしてこんな時刻に
 ……月を見ながら宿題の四行詩でも練っていたのかい。」
布団を敷いた寝台の上に座り、アリーは足を揺らした。
なぜだか侠達に不満をもったような、少々不機嫌な横顔だった。
「言い寄られていた。」
「へぇ。」
僕と同い年のアリーに言い寄るとは
ずいぶん小さい上に躾がなってないお転婆だなと
侠達が考えていると、アリーは僕の寝台に寝そべりながら
侠達を見上げた。
「同門の青堂慶だよ。僕達より、二つ上の。」
「え?」
アリーは顔を布団に押し付ける。
白いうなじが、美しかった。
「僕に気があるんだよ。……知らない?」
「……え。」
「最近、好きなやつも居るのさ。」
アリーは窺うように、侠達を見た。
「油、高いのに。金持ちなんだ。」
「僕の家は妹の薬代か、僕の学費かで悩んでいる
 ようなところだよ。これ、自分で作ったんだ。
 杏を集めて。だから、煙がひどい。
 たぶん顔が、黒くなってるから、寝る前に顔を洗わなきゃ。」
「ふぅん。」
最初からどうでもいい質問だったのか
気のない返事をしてアリーは布団をめくって
疲れたように身を滑り込ませていた。
「境は泊めてくれ。」
「なんで?自分の部屋で寝ればいいじゃないか。
 君は小さいけど僕は大きい方だし、第一変だよ。」
小さいことを指摘されるとアリーはおこるか
すねるか言い訳するかが常だったが
それも忘れて侠達は言った。
布団の中から、声が聞こえる。
「夜這いされるのが、やだ。」
「……まさか。」
「さっきは蹴り飛ばしたけどね。
古来英雄が首を取られるのは
だいたい寝てるときさ。……おやすみ。」
侠達はアリーの言葉の意味を考えて
頬を紅くした。
「……そ、そう……いや……ああ。
おやすみ。」
侠達はなかなか、寝付けなかった。
二人で寝台を共用しているのだから狭かったし
寝る前にアリーが言ったことが、頭にこびりついていた。
寝返りをうったアリーの手と顔が
侠達の胸に触れたまま、動きをとめた。
喧嘩は得意ではないが、朝になったら、友と我が
寝所のために、私闘もやむをえないと考える。
気づくと侠達の胸に顔を預けたまま
アリーは月光に淡く光る青い目で僕を見ていた。
髪が、少し乱れていた。
「眠れない?」
「え?いや、君とは別の理由だよ。
「…そう。」
侠達は、目をつぶった。
...

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